コンサルタント弁護士・籔本恭明(やぶもとやすあき)
経営の視点
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週刊東洋経済2016.10.29 副業のススメ クラウドソーシングは副業貧乏への入口なのか
週刊東洋経済2016.10.29 副業のススメ クラウドソーシングは副業貧乏への入口なのか
作成:2016年11月3日(木)|更新:2016年11月3日(木)
 岩井克人先生の「資本主義を語る」(ちくま学芸文庫)によると、資本主義の本質は「差異」にあるようです。
 ヨーロッパとインドの交易を仲介していたヴェニスの商人は、インドではわずかな金銀で手に入るコショウを、その20倍から30倍で売れるヨーロッパに持ってくる遠隔地交易によって、その「差異」から富を生みだしました。
 資本主義における資本家階層の誕生
 15~16世紀になると、イギリスでは対外貿易が本格化してきます。
 当時のイギリスは毛織物を輸出していました。
 ところが、イギリスは小さな島国なので、毛織物を大量に生産するだけの土地が足りませんでした。
 そこで地主(ジェントリー)が農民から強引に農地を没収し、そこを柵で囲い込んで中で羊を飼い始めました(「囲い込み運動」)。
 この囲い込み運動こそが、資本家と労働者が誕生したきっかけとなりました。
 つまり、土地を追われた農民たちは、もう自分の労働力を切り売りするしか生きる道がなくなります。
 その労働者たちは毛織物工場での「工場制手工業」(マニュファクチュア)で働くようになりました。
 囲い込み運動が、労働者階級と資本家階級を誕生させたのです。
 こうして、元農民が提供する安い労働力と毛織物が生み出す「差異」によって富を生み出しました。
 岩井先生によるとこの「差異」が資本主義を生んだと説明されています。
 しかし、ウルリケ・ヘルマンの『資本の世界史』によると、資本主義が成立したのは、この「差異」が労働者に還元されて、労働者が同時に消費を担うようになってから以降だと分析しています。
 つまり、最初に生まれた「富の差異」が賃金上昇に分配されて、消費者の層が厚く形成されて、富の循環が生じたときに資本主義が成立したということでしょう。
 さて、このまでを伏線にして、クラウドソーシングを考えてみます。
 数年前、シリコンバレーのOdeskを見学しました。
 東欧圏に嫁いだ日本人妻が、クラウドソーシングで翻訳をやっていました。
 その国と日本との賃金の「差異」によって、依頼する日本企業は安く外注することができます。
 また、その国で専業主婦をしている日本人妻にとって、その報酬は決して安くありません。
 ネット英会話レア・ジョブにしても、クラウドソーシングにしても、世界をネットにつなげば、その「賃金差異」を利用して富を生み出すことは可能です。
 つまり、ネットによってボーダーがなくなったとき、賃金が平準化する、まさしく、同一労働同一賃金が国境をまたいで成立するわけです。
 ここで問題なのは、世界を眺めてみて、我が国の平均賃金は低くないということです。
 この低くない我が国の賃金が、アジア、東欧を含めて「平準化される」のが、クラウドソーシングの本質だと思います。 クラウドソーシングで富を生み出せる人は、我が国より賃金が高い国の仕事を奪い取れるだけのスキルと能力が求められるでしょう。
 平均賃金が相対的に高い国では、クラウドソーシングは、国内の労働力ではく、相対的に低賃金の海外の労働力を活用することになるでしょう。 
 これは、「差異」を活用する資本主義の本質だと思います。
 この「差異」を活用して収益を上げた企業が、どのように分配するかが、資本主義が成功するかどうかの分岐点になるのではないでしょうか。
 


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