コンサルタント弁護士・籔本恭明(やぶもとやすあき)
経営の視点
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ゲーム理論 囚人のジレンマ
ゲーム理論 囚人のジレンマ
作成:2016年8月13日(土)
(ゲーム理論)
ゲーム理論は、市場における競争や協調を理解する上で助けになります。
ゲーム理論では、プレーヤーがどのような行動をとるかを予想します。
しかし、プレーヤーの行動予測もさることながら、ゲーム理論は、どのような行動をとれば、もっとも社会的な損失が少ないかについても示唆を与えてくれます。

(囚人のジレンマ)
ここで、有名な「囚人のジレンマ」を取りあげてみましょう。
「囚人のジレンマ」とは、共犯で重い犯罪を犯した甲と乙の2人の人間が、捜査のために別件逮捕されているという前提で、どのような行動をとることが利益がある、または、損失が少ないかを考えます。
警官が2人を隔離して取り調べます。
警官は、「もし相手が黙秘し、お前だけが自白したなら無罪にしてやる。」と持ちかけます。
もし、この警官の誘導に乗って、一方が黙秘し他方が自白した場合、黙秘した方が懲役10年(-10)、自白した方が無罪になるとします。
2人とも自白した場合は、2人とも懲役5年(-5)になり、2人とも黙秘した場合は、2人とも懲役1年(-1)になると仮定します。

(どのような行動をとれば最も得か)
乙が黙秘している場合、甲は黙秘すれば懲役1年、甲は自白すれば無罪となります。
したがって、乙が黙秘している場合、甲は自白する方が有利になります。

乙が自白している場合、甲は黙秘すれば懲役10年、甲は自白すれば懲役5年になります。
したがって、乙が自白している場合、甲は自白する方が有利になります。

こうすると、乙が黙秘している場合も自白している場合も、甲は自白する方が有利になるので、自白を選択することになります。
しかし、相手も同じ行動を選択すると、2人とも自白することになり、2人とも懲役5年になります。(-10)

(利他的行動選択)
甲と乙が、隔離されておらず情報を共有できたとすれば、双方が黙秘を選択して、2人とも懲役1年になります。
前提のとおり隔離されていたとしても、もし「自分が得をするかどうか」ではなく、「相手が得をするかどうか」という基準で行動を選択するとすればどうなるでしょうか。
乙が黙秘している場合、甲が黙秘すれば乙は懲役1年、甲が自白すれば乙は懲役10年になります。
このとき、相手の利益を最大化する、または、相手の損失を最小化するという行動選択をすれば、甲は黙秘を選びます。
乙が自白している場合、甲が黙秘すれば乙は無罪、甲が自白すれば乙は懲役5年になります。
このとき、相手の利益を最大化する、または、相手の損失を最小化するという行動選択をすれば、甲は黙秘を選びます。
相手の利益を最大化する、または、相手の損失を最小化するという行動選択をすれば、黙秘を選ぶことになります。
ここで、このような利他的な行動選択が社会的に合意されていた場合には、たとえ隔離されていた場合であっても、協調行動を行った場合と同様に、甲も乙も黙秘を選択することになり、2人とも懲役1年になります。(-2)
全員が他を出し抜かず利他的な行動を選択したときにゲームのプレーヤーの便益を最大化、または、損失を最小化できることを示唆しています。

(競争による便益)
ただし、囚人のジレンマでは、社会に対する影響、競争による効率化、競争によるイノベーション、競争による消費者への便益を捨象しています。
さて、来年度4月2日から、改正医療法が施行されます。
競争より協調というキャッチフレーズで、地域包括ケアシステムを構築していこうと動き出します。
囚人のジレンマでは、甲と乙の利得と損失を考えます。
甲、乙の損失を最小化するためには、協調行動または利他的行動が有益だということでしょう。
しかし、社会的な便益を考える際には、ゲームのプレーヤーのみならず、消費者、受益者の便益も考えるべきではないでしょうか。
医療の質に関する情報を、消費者に分かりやすく開示することが求められると考えます。


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