コンサルタント弁護士・籔本恭明(やぶもとやすあき)
経営の視点
経営の視点
事業承継(その35)企業の原理と家族の原理の相克
事業承継(その35)企業の原理と家族の原理の相克
作成:2016年5月20日(金)
事業承継(その35)企業の原理と家族の原理の相克
企業の基本原理は競争であり、家族の基本原理は和と考えると、両者は本来支配している原理原則が相反していると言えます。
そこで、ファミリー企業における経営課題は、いかにこの相克をマネジメントするかに関わってくるわけです。
ここから派生するファミリー企業経営の課題として、①支配の正当性、②同族ゆえのコンフリクト、③経営戦略と後継者育成、④番等問題、⑤持分の希薄化の問題が挙げられます。
そもそも、人が家族を求めるのは、本能的なものと言えます。
自分の財産を子供に譲りたいと思うことと同様に、家族と家業、家族と家格、家族と家産、家族と家名とが、それぞれ密接不可分であると認識された場合、本能的に子供に家業を承継させたいと願うのが親心でしょう。
さらに、単なる承継にとどまらず、家格を上げ、家産を増やし、家名を高めるためは、家業を成長させようと考える。これは、本能が求めているものと言えるでしょう。

8割の経営者は子供に継がせたい
2007年の国民生活金融公庫総合研究所が実施した「小企業の事業承継問題に関するアンケート」では、承継者を決めていると回答した1403社のうち「後継者は子供でなければならない」と答えたのは29.9%、「後継者はできるだけ子供がよい」と答えたのは48.8%と合わせて78.7%にのぼり、「子供であることにはこだわらない」と答えた17.3%を凌駕しています。
人間は必ず死にます。
自分が死んだあとに自分が生きた証を残したいと考えるのは当然のことでしょう。
自分のDNAは、子供に引き継がれます。自分が生きた証が、子供であり家業であるということもできるでしょう。

和を以って競争に勝つ
ファミリー企業においては、家族の和を保ちながら、企業間競争に勝ち抜いていかねばなりません。
八姦
 ファミリーを和を維持するためにも、韓非子の八姦について注意するとよいと思います。
 韓非子は、君主を操る八種の害悪について述べています。
 八姦の方法には、同床、在旁、父兄、養殃、民萌、流行、威強、四方があります。
 このうち、同床、在旁、父兄、四方は、現在のファミリー企業経営においても、十分に配慮しなければならない事項です。
①同床
 同床とは、君主と同衾する妻、妾、美女、男色などと通謀して君主を操ろうとすることです。
名君・太宗の御后・文徳皇后は、太宗の内助に努めました。あるとき太宗が文徳皇后に臣下の賞罰について意見を求めたところ、皇后は「牝鶏の晨するは、これ家の索くるなり」(女が国政に口出しすると、国家が傾く)と言って意見を言わなかったといいます。
 ファミリー企業においても、妻、妾の権勢が強くなり、企業との利益相反が生じたときには、調整が困難になることがあります。
 文徳皇后のような自制心は、全く見事と言うほかありません。
②在旁
 在旁とは、芸人、近侍など君主の傍に仕える者に阿諛迎合させ君主の判断力を鈍らせることです。
 近侍の発言については、是非をとがめ、余計な口を慎ませることが必要です。
③父兄
 父兄とは、親戚や信頼する大臣と通謀することです。
④養殃
 養殃とは、浪費、遊楽などで君主を満足させ政治を鈍らせることです。
⑤民萌
 民萌とは、人気取りの政策をさせて君主を満足させ判断力を失わせることです。
⑥流行
 流行とは、弁士を雇い巧みな弁舌で世間知らずの君主をだますことです。
⑦威強
 威強とは、家臣がヤクザや軍人を手懐けて、それを後ろ盾に権勢を振うことです。
⑧四方
 四方とは、外国と通じ圧力をかける、またはクーデターを起こすことです。

  このエントリーをはてなブックマークに追加
経営の視点に関する詳細や関連記事はこちらに御座います。併せて御覧ください。