コンサルタント弁護士・籔本恭明(やぶもとやすあき)
経営の視点
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事業承継(その31)多産による成功
事業承継(その31)多産による成功
作成:2016年5月12日(木)
事業承継(その31)多産による成功
ベアリング家
1762年、フランシス・ベアリングがイギリスでベアリング銀行を創業し巨万の富を築きました。ベアリング銀行は、イギリス王室とのつながりが深く、成功した投資銀行でしたが、シンガポール支店のニック・リーソンが、1995年の阪神淡路大震災によってデリバティブ取引の損失を拡大させ8.6億ポンドの損失を出し、名門ベアリング銀行は破綻しました。
ベアリング家は、ロスチャイルド家が台頭するまでイギリスの金融を支配していました。クローマー伯爵、ノースブルック男爵、レヴァルストーク男爵、アシュバートン男爵、ハウィック・オブ・グレンデール男爵、ベアリング准男爵が、ベアリング家のタイトルです。まさに大家族である。ベアリング家が血縁だけで成功したのは、このように多産であったからだといえるでしょう。
このように多産であったことから、ビジネスで成功したい有能な後継者を欠くことなく、また、血族であっても無能と分かれば閑職に追いやることができたのです(ランデス「ダイナスティ」参照)。

多産を補う擬制的血縁
日本においても武家では側室を置いて血縁の継続に努力しました。
側室による「多産」によって、後継者候補を輩出したといえるでしょう。まさしく、多産であることでお家断絶を回避したのです。
しかし、日本において一般の商家では、側室制度はありません。養子制度という人工的な「擬制的血縁」の活用によって、事業承継を行ってきた例が多いのはこのためです。

大石天狗堂
京都市伏見区にある大石天狗堂は、1800年創業の花札・百人一首製造業の非上場企業である。
創業者大石蔵之助には後継ぎ不在のため、親戚の前田家から養子を迎えました。これ以後、後継ぎは、大石家と前田家のどちらかが家業を継ぎ、片方で男子が生まれない場合には、もう片方から養子を出して両家を維持したといいます。

同業者内婚
 近世においては、同族内婚、同業者内婚を特徴としていました。

 「明治期以前の婚姻を一括りにすることはできないが、近世商家にあっては、同族や親戚の間の内婚、あるいは同業者内婚を一つの特徴とする。その中には、分別家への本家支配を維持・強化する形もあれば、嫡系といえども能力によっては「家」を継がせず、有能な婿養子を迎える場合もあった。いずれにしても根底にあったのは、家業経営体の確実な存続であり、一族あるいは同業者の連帯をたかめることが求められていた。」(米村千代「資本家の婚姻と家の存続戦略」)

 近世商家では、まさしく家業承継と家の存続とは同義であったといえるでしょう。家を存続させるということは、まさしく家業を存続させることだったのです。

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