コンサルタント弁護士・籔本恭明(やぶもとやすあき)
経営の視点
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事業承継(その2)「ファミリー会社の定義」
事業承継(その2)「ファミリー会社の定義」
作成:2016年3月27日(日)
事業承継(その2)「ファミリー会社の定義」
 一般論として、学問は、まず定義から始まります。定義は、学問にとってアルファでありオメガでもあります。
事業承継を考える際に、多くはファミリービジネスにおいて最も問題になります。
今でも話題になっているロッテのケースしかり、最近の大塚家具のケースしかり、かつての星野リゾートのケースしかり、ファミリービジネスにおける事業承継問題は常にホットな話題であり、上手に承継できれば実にクールな話題になります。
そこで最初に、厳密な定義は無理だとしても、とりあえずの定義としてでも、ファミリー企業とは何かを考えてみましょう。
そもそも、ファミリー企業は、小規模閉鎖会社に限るのでしょうか。
上場企業でもファミリー企業は存在するのでしょうか。
今しがた、なにげなしに大塚家具のケースに触れましたが、この企業は上場企業ですが、やはりファミリービジネスだと、広く認識されています。
少し学問ぽく「ファミリー企業とは何か」という定義から考えた方がよさそうだ。
ここで少し寄り道して、ファミリー企業と似た言葉で「同族会社」という言葉を考えてみます。
日本の法人税法は、同族会社を次のように定義しています。
「同族会社とは、株主3人以下及びこれらの同族関係者が有する株式等(議決権のない株式を含む)の合計額が、その会社の発行済株式総数等の100分の50以上に相当する会社をいう。」(下線部は籔本。)
この規定でいう「株主」とは、株主または社員その他法人の出資者のことです。
また、「同族関係者」とは、大別して(Ⅰ)特殊関係のある個人と、(Ⅱ)特殊関係にある法人に区別されます。
(Ⅰ)「特殊関係にある個人」とは、次のような個人をいいます。
①株主等の親族
②株主等と事実上、婚姻関係と同様な事情にある者
③個人である株主の使用人
④前記以外の者で株主等から受ける金銭等によって生計を維持しているもの
⑤ ②~④に揚げる者の親族でその者と生計を一にしているもの。
(Ⅱ)「特殊関係にある法人」とは、次のような法人をいいます。
①株主等の一人が有する他の会社の株式の数の合計が、当該他の会社の発行済株式総数の50%以上に該当する場合の当該他の会社
②孫会社
③曾孫会社
④兄弟会社。

 
 国税庁の「税務統計からみた法人企業の実体」においても、250万社の法人のうち、同族会社は95%を超えます。
また、非同族の同族会社は1.6%ありますが、この非同族の同族会社とは、同族会社の判定の際、同族会社でない法人を株主等に選定したため同族会社となる法人であって、これを除いた純然たる同族会社は、わずか3.1%しかないのです。
「会社」と言えば「同族会社」のことで、非同族会社はむしろ例外的な存在なのです。
 そして、非同族会社のほとんどは、元々同族会社から始まっているケースがほとんどです。
 ということは、経営学を学習する際には、まず同族会社を学習してから、非同族会社を学習するのが本来の筋だと思うのです。
 今、ビジネススクールで学んでいる経営学は、非同族会社という極めて例外的なケースを集めて学んでいて、同族会社というほとんどのケースを例外的に学んでいるといってもいいのではないでしょうか。
ここでファミリービジネスの定義に戻りますが、これからお話しする際には、「創業家のファミリーが経営を支配する企業」を「ファミリービジネス」と表現することにします。
そして、ファミリー企業が重要なウエイトを占めているのは、日本に限ったことではなく、海外においても、ファミリー企業の割合は高いのです。
バルセロナに本拠を置く国際ファミリー企業調査アカデミー(IFERA)によると、創業一族が支配するファミリー企業の割合は、欧州諸国で60~85%、米国では96%に至るといいます。海外においてもファミリー企業は圧倒的多数を占めることが分かります。(みずほ総合研究所編「オーナー社長と後継者のための事業承継入門」から)
先ほど触れたように、経営学を学ぶ多くの学生が、最初に対象とするのは、所有と経営が分離した上場企業を前提として経営学を学びます。
そのためか大多数の学生は、非同族会社が一般的で、同族会社は、例外的なものとの先入観を抱いているように思います。
しかし、数からいえば、これこそ偏見です。
むしろ、非同族の企業が一般的であるとの考えを改めてもらわないと社会に出てから判断を間違うのではないでしょうか。
みずほ総合研究所編「オーナー社長と後継者のための事業承継入門」によると、米国ではファミリー企業が96%を占め、GNPへの貢献度は40%、雇用への貢献度は60%、フランスでもファミリー企業は60%を超え、GNPへの貢献度は55%、雇用への貢献度は58%ということです。

ちなみにファミリー企業に対する統一的な定義はありません。
研究者がそれぞれの研究目的によって、家族関係者の所有構造、経営への関与、世代間の経営権譲渡などによって定義しているようです。
ここでの「ファミリー企業」とは、上記の法人税法上の定義における「同族会社」とイコールではありません。
私の関心事は、同族が故に抱える経営課題を如何に克服し成長するかを検討することです。
同族であるが故に、非同族企業では見られない人間的な葛藤や様々な経営課題が内在し、時に顕現し、時に企業の存続を脅かすこともあります。
ところで、人口千人あたりの一年間の離婚件数のことを離婚率といいますが、2014年の離婚件数は22万2107件、離婚率は1.77です。
ちなみに、明治時代には離婚率が3.39と高かったのは、嫁の追い出し・逃げ出し離婚がおおかったからなどと言われています。
さて、一般の夫婦ですら、生涯通じて争いなく和合して過ごすのは難しいものです。
まして、経営には財産がからみ、権力がからみ、同族経営では子供の利害もからんできます。
同族が何らかのかたちで経営に関与していれば、そこに葛藤が内在しているといえるでしょう。
経営に関する葛藤があり、財産の分配に関する葛藤があり、しばしば家族内・家族間の葛藤があります。
このように同族が企業経営に関与しているが故に生じる経営課題があるのです。
ですから、創業者の同族が企業経営に関与しているファミリービジネスを広く対象として考えて、創業者の家族が経営に参画している企業を、ファミリー企業(ファミリービジネス)と広く定義しておく必要があると思うのです。

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