コンサルタント弁護士・籔本恭明(やぶもとやすあき)
経営の視点
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医療介護総合推進法及び医療法改正
医療介護総合推進法及び医療法改正
作成:2014年10月29日(水)
本年6月に医療介護推進法が成立しました。
これと並行して、医療法の改正が行われました。
(医療法7条の2第3項)
「都道府県知事は、第一項各号に掲げる者が開設する病院(療養病床等を有するものに限る。)又は診療所(前条第三項の許可を得て病床を設置するものに限る。)の所在地を含む地域(医療計画において定める第三十条の四第二項第十号に規定する区域をいう。)における療養病床及び一般病床の数が、同条第五項の厚生労働省令で定める基準に従い医療計画において定める当該区域の療養病床及び一般病床に係る基準病床数を既に超えている場合において、当該病院又は診療所が、正当な理由がなく、前条第一項若しくは第二項の許可に係る療養病床等又は同条第三項の許可を受けた病床に係る業務の全部又は一部を行つていないときは、当該業務を行つていない病床数の範囲内で、当該病院又は診療所の開設者又は管理者に対し、病床数を削減することを内容とする許可の変更のための措置をとるべきことを命ずることができる。」
と定めています。
(疑問点)
上記に関連していくつか問題点を示します。
1 適正な病床数になるよう、都道府県知事が措置を取る前に、地域で話し合うことが想定されています。
しかし、どこまで話し合えば、独占禁止法のカルテル違反になり、どこまでの話し合いならば、カルテル違反にならないか明確になっていません。これが明確でないと、怖くて話合いができません。
2 地域の話し合いで決まらなければ、知事が、①病床の新規・増床への対応、②既存の病床の機能転換、③稼働していない病床について削減するよう、許可の変更のための措置をとるべきことを命ずることができることになっています。
しかし、民間病院の病床を削減した場合、補填に足りない部分について、財産権(憲法29条)の補償が求められますが、この際に、財産権の侵害額をどのように確定するのか。この評価は困難を極めるでしょう。
3 知事の権限行使が公正である担保は何なのか。
例えば、地元有力病院に有利な裁定をされる危険はないのか。(スペインのカシキスモという政治体制では、地域政治家が地元有力者の下僕になることが問題視されています。)また、地元自治体病院に有利な裁定になる危険はないのか。(知事が県立病院を潰すと、いままでの累積赤字を一般会計から補填しなければならなくなり、当然、政治責任を問われるので、県立病院の病床を削減する措置は回避される傾向にならないのか。)
4 今回の改正は、地域包括ケアという考えがベースにありますが、増田寛也元総務大臣が指摘するように、2040年には、地方自治体の約半数が消滅すると言われております。すなわち、地域包括ケアが成功する地域も相当数あるでしょうが、より多くの地域では、地域包括ケアは破綻することが必至ではないか。
5 今回の基本的な考えは、競争から共生へというものです。しかし、「競争なくして成長なし」、競争なくして質の担保をどうするのか。医療事故調査制度は、死亡事例を扱うものであって、これで医療の質を担保できることは決してありません。
このように問題点は多々あります。
しかし、賽は投げられたわけです。
効率的な医療が提供されることを期待します。
(厚生労働省の資料によると大まかな内容)
1.新たな基金の創設と医療・介護の連携強化(地域介護施設整備促進法等関係)
①都道府県の事業計画に記載した医療・介護の事業(病床の機能分化・連携、在宅医療・介護の推進等)のため、消費税増収分を活用した新たな基金を都道府県に設置
②医療と介護の連携を強化するため、厚生労働大臣が基本的な方針を策定
2.地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の確保(医療法関係)
①医療機関が都道府県知事に病床の医療機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)等を報告し、都道府県は、それをもとに地域医療構想(ビジョン)(地域の医療提供体制の将来のあるべき姿)を医療計画において策定
②医師確保支援を行う地域医療支援センターの機能を法律に位置付け
3.地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化(介護保険法関係)
①在宅医療・介護連携の推進などの地域支援事業の充実とあわせ、全国一律の予防給付(訪問介護・通所介護)を地域支援事業に移行し、多様化(※地域支援事業:介護保険財源で市町村が取り組む事業)
②特別養護老人ホームについて、在宅での生活が困難な中重度の要介護者を支える機能に重点化
③低所得者の保険料軽減を拡充
④一定以上の所得のある利用者の自己負担を2割へ引上げ(ただし、月額上限あり)
⑤低所得の施設利用者の食費・居住費を補填する「補足給付」の要件に資産などを追加
4.その他
①診療の補助のうちの特定行為を明確化し、それを手順書により行う看護師の研修制度を新設
②医療事故に係る調査の仕組みを位置づけ
③医療法人社団と医療法人財団の合併、持分なし医療法人への移行促進策を措置
④介護人材確保対策の検討(介護福祉士の資格取得方法見直しの施行時期を27年度から28年度に延期)

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