コンサルタント弁護士・籔本恭明(やぶもとやすあき)
経営の視点
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中国のメディア戦略
中国のメディア戦略
作成:2013年7月31日(水)|更新:2013年9月27日(金)
ニューズウィーク7月23日号には、「チベットを裏切るハリウッド」と題して、米国映画界に対する中国の影響力の拡大を危惧した記事が掲載されています。
 
かつて、ブラッド・ピット主演の映画「セブン・イヤーズ・イン・チベット」で、中国政府によるチベットへの暴力を描き、これによりピットが中国への入国が禁じられたのは記憶に新しいところです。
 また、リチャード・ギアが熱心なチベット仏教信者であり、中国批判を繰り返しているため、ギアをCMに起用しているフィアットが中国政府に謝罪を強いられたこともよく知られています。ギアもまた、中国への入国は禁じられています。
 ギア、ハリソンフォード、ジュリアロバーツなどのハリウッドスターが揃って、チベットへの人権抑圧に対して中国への抗議を行ったのは2000年のこと。このころはハリウッドは人権擁護という大義がまかり通っていました。
 
リーマンショックが起こった2008年9月15日のおよそ3か月前に、米国で映画「カンフーパンダ」が上映されました。
「カンフーパンダ」を制作したドリームワークスは、ジェフリー・カッツェンバーグ、スピルバーグ、デビッド・ゲフィンらが1994年に設立した映画会社です。映画会社は、過去の作品のソフト化によって収入を依存していますが、同社は過去の作品が少なく経営的には厳しい状況が継続していました。そこで、2005年には、同社は、パラマウントの子会社に売却することになりましたが、スピルバーグとパラマウントの確執から、2007年、売却が破談になってしまいます。そこで、中国資本に頼るしかなくなったのです。その後、「カンフーパンダ2」の制作と、同社の中国依存が強化されています。
フェニックス・ピクチャーズが制作した米中合作映画「シャンハイ」(キューザック、コン・リー、渡辺謙、菊池凛子が主演。2010年)でも、歴史的な事実とは全く異なる叙述で、日本が悪者にされています。
本年、ドリームワークスは、映画「チベット・コード」を中国電影集団公司と共同制作すると発表しました。
同公司の韓会長は、「中国文化や道徳観や価値観を世界に広める一助になるだろう。」と中国のイメージアップをもくろんでいることを露骨に表しています。
 映画という世界は資本の論理がまかり通るところです。しかし、その影響、いわゆるソフトパワーは政治的なものです。我が国も、敗戦後、米国の文化の影響を大きく受けたのは、ハリウッド映画であり、米国テレビドラマでした。

かつて麻生元外務大臣(現財務大臣)が「自由と繁栄の弧」というコンセプトで、東南アジアからトルコにかけて連携の必要性を訴えました。安倍首相も「自由と繁栄の弧」という言葉は使いませんが、首相就任後の訪問国を見ると、モンゴル、ロシア、ポーランド、トルコ、ミャンマー、ベトナム、インドネシア、フィリピンとまさしく「弧」を描いています。昨日、和歌山県串本町町長の講演を聞きました。1890年のエルトゥールル号事件で日本人が献身的にトルコ人を救助したことを覚えていたトルコ政府が、1985年、イラン・イラク戦争のとき、空爆が続くイランからトルコ国民の救出に優先して飛行機で200名あまりの日本人を救ってくれました。このトルコ航空のパイロットは、「私たちは、エルトゥールル号のことを忘れていない。同胞である日本人のために命をかけることは名誉なことだ。」と、フセインに撃墜されるかもしれない飛行機を飛ばして日本人を救助してくれます。この機のCAは、自ら志願して搭乗したのです。
 もちろん、絆を築くということはたやすいことではありません。しかし、「弧」の絆を強化しないと、中国のソフトパワーに対峙することは到底かなわないと思います。

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