コンサルタント弁護士・籔本恭明(やぶもとやすあき)
経営の視点
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ジョセフ・スティグリッツの「世界の99%を貧困にする経済」を読む
ジョセフ・スティグリッツの「世界の99%を貧困にする経済」を読む
作成:2012年7月22日(日)|更新:2013年5月14日(火)
ノーベル経済学賞受賞者ジョセフ・スティグリッツの「世界の99%を貧困にする経済」を読みました。
富裕層が更に裕福になれば、さらなる成長によって、全員に「おこぼれ(トリクルダウン)に与ることができるという考え方を「トリクルダウン効果」といいます。
スティグリッツは、トリクルダウン効果が無かったことを説明し、むしろ、中下層に分配すれば、全員に利益がもたらされる「トリクルアップ効果」があると説明されています。
緊縮財政はうまくいかないとして、政府支出は極めて効果的だと説明されています。

昨今、政府支出に極めて懐疑的になっているので、オーソドックスな経済学を学ぶと返って新鮮に移ります。
確かに、ひとつひとつは納得できる内容です。
しかし、今の日本の財政構造を健全化する処方箋にはならないでしょう。
日本の生活保護支給額が3.7兆円という膨大な規模であるという現実を直視すると、社会保障の充実と同時に勤労の義務を徹底する必要があります。
スティグリッツは、私欲が市場をゆがめていると明らかにしていますが、富裕層であっても中下層であっても、私欲が政治と市場をゆがめていることは明らかでしょう。
人間の本能である欲を否定すると、働かなくなります。
ただし、市場をゆがめるような私欲は戒めるよう教育するべきでしょう。
勤労の精神と自助・自立の精神を涵養し、その上で社会保障でセーフティネットを充実させるという、当たり前の視点がこの本にはみられません。
山田方谷がいうところの「義」が欠けているのです。
しかし、「公共事業は悪でありケインジアンは間違っている」と決めつけてしまいそうになっている人は、この本を読んで、もう一度オーソドックスな経済学に触れて頂き、バランスを取り戻して頂きたいと思います。


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